習志野市
外国人労働者の急増で広がるソウルフード ネパールの定番“モモ”を食す〈AERA〉
人手不足解消のため、近年急増しているのが外国人労働者。彼らの胃袋を満たす飲食店も広がる。そのディープな味わいを紹介する。
新大久保周辺で数を増やしているのがネパール料理店だ。なかでもネパール人留学生などから人気なのが、15年にオープンした「バラケード」。日本人のお客はほとんどいない。マネージャーのガイレさんはこう話す。
「一番人気は500円のマトン(羊肉)カレーセット。ダールスープ(豆のスープ)もつきます。あまり利益は出ないのですが、留学生が増えていて、応援したい気持ちがあります」
週3、4回通う常連客で大学生のラビンさん(30)は、
「日本のカレーは面白い味ですが、本場とはまったく違います。ネパールでは一般的な“モモ”が食べられるのも嬉しいです」
その聞きなれぬモモを記者も注文した。見た目は小籠包。ただ、口のなかでぶわっと肉汁が飛び出したら最後、口内にスパイスが広がり、未開のテイストに到達する……。
ネパール人留学生を受け入れ、現地にも何度となく足を運ぶ習志野外語学院(千葉県習志野市)の戸田安信理事長はこう話す。
「ネパール人の朝食はお茶を1杯飲む程度で、10時頃にビスケットなどのおやつを食べます。昼食は14時頃で、ここで最も食べられるものの一つがモモで、一人10個程度食べます」
本場のネパール料理店を見極める方法があるという。
「日本でおいしい味噌汁を作るのがいい奥さんと言うように、ネパールではおいしいダールスープを作るのがいい奥さん。本場のネパール料理店なら、ダールスープが出るはずです」
深刻な人手不足で急増する外国人労働者。ここ5年間で増加率が突出して高いのがベトナムとネパールだ。在留外国人は、ベトナム人が約5万2千人(12年)から約26万2千人(17年)に。同期間でネパール人は約2万4千人から約8万人に急増した。
さらに、フィリピン人も約20万人から約26万人と大きく増えている。東京・上野に日本で働くフィリピン人に愛されるレストランがあると聞き、足を運んだ。オードブル形式でフィリピンの家庭料理を500円で食べられるほかにも、人気の理由がある。フィリピンで人気のファストフード店「ジョリビー」のテイクアウト商品が週1で飛行機で運ばれてきて、売られているのだ。オーナーのグローさんはこう話す。
「フライドチキンは現地で買えば1本180円程度ですが、ここでは500円。それでも40本買っていく人もいます。日本のファストフード店などでフライドチキンを食べましたが、ジョリビーの味は見つかりません」
フィリピンオンライン英会話最大手レアジョブの貝瀬梢さんがジョリビーについて解説する。
「とにかくフィリピンではどこにでもある、子どもから大人までに愛される国民食と言えます。アメリカや香港などには進出していますが、残念ながら日本にはまだ店舗がありません」
外国人留学生や労働者の増加で日本にも入ってきたディープなソウルフード。本場の味を楽しむのもいいが、変わった使い道もある。ネパール料理店で出会った日本人客はこう話した。
「日本の居酒屋は隣客との距離が近く、仕事などの話がしづらいときがある。外国人向けの飲食店は周囲に日本人がおらず、気兼ねなく話せます」
そういう使い方もありかも。